地球

2011/10 Yuji.W

◇全球凍結◇

◎ 2011年6月12日、自然科学研究機構主催シンポジウム「宇宙と生命」(名古屋にて)を聞いてきた。

全球凍結

◎ かつて、地球全体が、氷に覆われ、ひとつの雪玉であった。しかも複数回あったらしい。

■ 惑星と氷の関係は、次の3つの状態が考えられる。

A 極だけ氷に覆われている。 現在の地球の状態

B 全体が氷に覆われている。 snowball planet

C 氷に覆われていない。

太陽から地球に降り注ぐエネルギーと、地球から宇宙へと放出するエネルギーが釣り合えば、その状態が続く。

B全球が氷だと、太陽の光線を反射するので、地球に降り注ぐエネルギーは減る。しかし、地球全体の熱の放出量も減り、その収支が釣り合う。

3種の状態は、どれも安定であって、きっかけがあると、別の状態に移行することができる。地球もかつて、地球全体が氷に覆われていた。その当時の赤道域に氷河堆積物が見つかっている。

1992年、アメリカの Joseph Kirschvink が提唱した。日本では、東京大学・田近英一(たぢかえいいち)が第一人者。

地球の特徴

■ 地球が、金星や火星と違うところ

地表に、液体の水がある ⇒ 二酸化炭素が吸収される。また、プレートテクトニクスが起きる。

窒素と酸素の大気がある。(金星では二酸化炭素90気圧、火星では0.006気圧)

大陸地殻(花崗岩)が広い範囲にある。(金星・火星では、大部分が玄武岩)

磁場を持つ。

海洋地殻 oceanic crust 新しい玄武岩でできている。厚さ6km。

大陸地殻 continental crust 上部が花崗岩、下部が玄武岩。古い岩石もある。厚さ30-40km。

玄武岩 basalt 半分がSiO2(石英quartzs)、他に金属Fe,Mgなどを含み、黒っぽく見える。密度3.0

花崗岩 granite 地下深い所で、ゆっくり冷えて固まってできた。陸地を作る、一般的な岩石。白っぽい。密度2.8。水がないとできない。
3/4がSiO2(石英quartzs)。1割程度がAl2O3(長石feldspar)地球以外の太陽系内では、地球にしか見つかっていない。月、火星、金星などにはない。

プレートテクトニクスと大気中の酸素

■ 地球の表面は、10数枚の厚さ約100kmのプレートに分かれ、それぞれのプレートがマントル対流に乗り、1年に5cm程度のスピードで水平移動している。

■ 岩石に水分が含まれるようになると、塑性変形しやすくなる。

マントルは、水分を含み、変形しやすく、対流運動を起こし、プレートを移動させる。プレートは、水分を失い、固くなり、一枚岩のように移動する。

プレートが海溝で沈むときに、海水を巻き込み、マントルに水分を補充する。

海洋地殻の玄武岩が、海溝で沈む時に、水分を含み、ケイ素とアルミニウムをより多く含むマグマを作る。それが上昇し、ゆっくり冷え、白っぽい花崗岩となって、大陸地殻にくっつき、その一部となる。

■ 現在の大気 窒素78% 酸素21% アルゴン1% 二酸化炭素0.03%

■ 酸素の循環

<酸素と結合し、大気中の酸素を少なくするもの> 鉄などの鉱物

<酸素を作り出すもの> 光合成 火山活動

■ プレート運動が果たす役割

マントル対流(水が必要)  ⇒ プレートの運動  ⇒ 火山活動  ⇒ 酸素、二酸化炭素を産み出す

大陸移動

■ 「ウィルソンサイクル」約4億年の周期で、大陸の分裂、合体が起きる。

大陸が集まり「超大陸」ができる ⇒ 超大陸の下から高温の「マントルプルーム」が上昇し、超大陸を分裂させる ⇒ 分裂していった大陸同士がぶつかり、またひとつになる

■ プレートの拡大速度が大きい ⇒ 火山活動が活発 ⇒ 二酸化炭素が増える ⇒ 気候が温暖 ⇒ 海水面が上がる

大気の温度を変える

■ 大気の温度を変える要因

二酸化炭素の量 ⇒ 温室効果

地球が氷に覆われる ⇒ 太陽光を反射してしまい、大気の温度は下がる。

温室効果とは、太陽からの熱を、二酸化炭素などが吸収し、熱を大気中にため込むこと。現在の地球の二酸化炭素濃度は、3/10000(体積比)。その温室効果は 33度分 。温室効果がないと、地表は-18℃になり、全球凍結しているはず。

■ プレートの運動が遅くなる ⇒ 火山活動が弱まる ⇒ 大気中の二酸化炭素が減少 ⇒ 温室効果の減少 ⇒ 地球の寒冷化 ⇒ 氷ができるとさらに、太陽光を反射する ⇒ 全球凍結へ

地球の炭素の循環

■ <二酸化他炭素を生むもの> 火山活動 有機物の腐敗

<二酸化炭素を吸収するもの> 光合成の他に、

海水中のイオン(カルシウム、マグネシウムなど)と結合し、個体化し、海底へ。

※ 海水中のイオンは大陸の岩石の風化で、できた。

※ 液体の水がない(金星や火星)と、二酸化炭素は吸収されない。

<炭素の循環>

海底にたまった、二酸化炭素が固化したものは、プレートに乗って移動し、海溝から地下に沈み、燃えて二酸化炭素となり、火山活動の噴出物の一部となって、また、大気に戻ってくる。

以上、数千万年かかるサイクルである。

<<結論>>

二酸化炭素の濃度が、ほどよく調節されている。したがって、大気の温度も安定している。

<二酸化他炭素の吸収を促進するもの>
プレートが沈み込む時に、プレートと共に移動してきた堆積物が、大陸の縁に順にくっついていく。大陸が少しずつ大きく成る。

大きな大陸ができた場合 ⇒ 風化する岩石が増える ⇒ 海水中のイオンが増える。 ⇒ 二酸化炭素をより多く吸収する ⇒ 温室効果が減り、大気の温度が下がる。

大陸が赤道付近にできる場合 ⇒ 気温が高いので、風化が進む。

大陸にくっついてしまった、二酸化炭素の固形物は、数億年ほど、そのまま風化しない。

全球凍結へ

■ プレートの運動が遅くなる ⇒ 火山活動が弱まる ⇒ 大気中の二酸化炭素が減少 ⇒ 温室効果の減少 ⇒ 気温が下がり始める ⇒ 氷が地球規模ででき始める ⇒ 全球凍結(snowball earth)。氷の厚さは1000m。数千万年〜数億年。

二酸化炭素を吸収する過程は起こらない。二酸化炭素を出す、火山活動は起こっていた。 ⇒ 二酸化炭素の濃度が増す ⇒ 気温が高くなる。40℃まで上昇

全球凍結の問題点

■ 全球凍結している間(数百万年〜数千万年)、生物(単細胞生物)は、どのように生き延びたか。火山活動がある地域で生き延びたのかもしれない。だが、長い間続く火山活動があったのか。

■ 氷河にもいろいろな生物がいることがわかってきた。したがって、全球凍結しても、生物は生きながらえたかもしれない。

ハビタブルゾーン

■ 惑星に生物が生まれる条件(水が必要だという仮定の下に)

太陽から近すぎず遠すぎず。ただし、少し遠くても、大気の温室効果があれば、構わない。<注>地球は、温室効果がないと、-18℃。

惑星が適当に重い。軽すぎると大気がなくなってしまう。重すぎると、岩石の周りに厚い大気が覆ってしまい、陸地ができない。

マントル対流があって、プレートが動き、炭素循環がある ⇒ 二酸化炭素の量がほぼ安定する ⇒ 気温がほぼ安定する

地表が氷で覆われていて、地表に海がなくても、惑星内部からの熱があれば、氷の下に海ができる。


水が液体として存在していける、太陽光の強さ S (地球軌道上の強さを単位として)

A:惑星の太陽光の反射率 B:惑星の太陽光の吸収率=1-A

0.3/B<S<0.9/B

地球の場合、A=0.3 B=0.7 だから、

0.4<S<1.3

太陽光の強さは、太陽からの距離の2乗に反比例するから、 1/root(S) を求めて、太陽-地球間を1とすれば、

0.88<(太陽からの距離)<1.5

ただし、これは、二酸化炭素と水蒸気の温室効果を、考えている。

★ お勉強 全球凍結 

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