偉人伝 2014/1 Yuji.W

☆写楽☆

◎ 写楽は1年も活動していないが、140余りの作品を残している。作品は、1期から4期に分けられる。余りにも作風が違うので、別人説もある。

<参考> 東京国立博物館、特別展「写楽」

「写楽を追え」内田千鶴子 イーストプレス 2007年初版

「浮世絵ギャラリー 写楽の意気」浅野秀剛 小学館 2006年初版

☆1期☆

■ 1794年(寛政6年)5月、6月

都座、桐座、河原崎座の夏狂言 雲母摺り 役者大首絵28図

落款「東洲斎写楽」*漢字はもっと難しい字

■ @都座「花菖蒲文禄曽我」5月5日初日。一人大首絵9、二人大首絵2、計11。

仇討ち物。3兄弟のうち仇討ちを果たせなかった長男と、悪人を描いているのは、すごい緊迫感。

A桐座「敵討乗合話」5月8日初日。一人大首絵6、二人大首絵1、計7。

 悪人と、その悪人に殺される人を、またもや描いている。仇討ちを果たすのは、「宮ぎの&しのぶ」という姉妹。

B河原崎座「恋女房染分手綱」「義経千本桜」5月5日初日。一人大首絵8、二人大首絵2、計10。写楽と言えばこの作品、「大谷鬼次の江戸兵衛」は、「恋女房染分手綱」に出演する盗賊団の頭。また、その盗賊団に殺されてしまう武士も描いている。この歌舞伎は、不幸だらけの、ただただ悲しいだけのお話。

■ 殺人事件、仇討ちばかり、1794年はこういうのが流行していたのか。

第一期は28図、のべ33人、不幸を背負った人か、悪人ばかり。みんな悲しい顔をしている。その劇のクライマックス、観客のだれもが息をのむシーンを題材にしている。

役者さんの絵を描いてみたいんだという写楽の気持ちが、よく出ているように思える。

「売れたい」より、「描きたい」が勝っているように思える。版元の蔦屋さんは、儲けるために写楽を抜擢したのだと思うが…。

写真やビデオがない時代に、よくこれだけ、動いている人物をとらえられるものだ。

きれいな曲線を描くラインは、美しく、ためらいがない。天才絵師は、みんなそう。ピカソしかり、手塚治虫しかり。

目、描く時のエネルギーが集約されているように思える。顔を見ると、目に視線がいく。役者ごとに目の描き方が違う。

手はへただと言う人がいるが、浮世絵はどれもこんな描き方をするようだ。その意味で、写楽も伝統に従っているのだ。「手」だけで、そのシーンの切迫感が表現されている感じがする。女性の手は、親指と他の3本の指を軽く合わせ、小指だけ軽く開く。

鼻は、鼻の頭の線と、鼻の穴の線が離れている。歌川豊国のは、くっついている。

男性の口は、薄い色と濃い色を使い分けている。

3人の役者を2回描いているが、違う役なのに、顔は同じ。1回描いた下絵をひっくり返して、もう1回使った?

写楽の作品を見ると、特別な特異な浮世絵師に思えるが、写楽の先輩やライバルたちの作品と比べると、そうでもないことがわかる。浮世絵の伝統にけっこう従って描いている。

☆2期☆

■ 1794年7月、8月

都座、桐座、河原崎座の秋狂言 すべて全身像

大判では一点を除き二人の役者が、細判では一枚に一人ずつ

落款「東洲斎写楽」*漢字はもっと難しい字

■ 構図や、着物の曲線などはさすがに上手だなあと思うが、顔は平凡。着物の柄などは、精緻になっている。先輩の浮世絵師にひけを取らない。

第1期と同じ役者さんを描いている作品は、顔がほとんど同じ。違う役なのに。

☆3期☆

■ 1794年11月、閏11月

都座、桐座、河原崎座 役者絵、役者追善絵、大童山を描いた相撲絵

細判役者絵に背景 間判大首絵の背景が黄つぶし

落款「写楽」に変わった。*漢字はもっと難しい字

■ 別人が、写楽の作品をまねして描いた?役者さんのお顔が、1期や2期のと同じのが目立つ。ただし、そういう風に、浮世絵師が描く顔がパターン化するのは、よくあったことらしい。それにしても、平凡な感じがする。それに、習字で言うところの「トメ、ハネ」がやけに目立つ。1期、2期の作品は、そんなに目立たない。

☆4期☆

■ 1795年正月

都座、桐座の新春狂言

連続した背景の細判のみ

落款「写楽」*漢字はもっと難しい字

■ あの曲線がほとんど見られない。直線が多い。顔に魅力がない。習字で言うところの「トメ、ハネ」がやけに目立つ。全く別人が描いたとしか思えない。

■ 落款は、1期から4期まで同じようには見えた。(後期は、「東洲斎」がないけど。)特別に、別人説を支持する証拠は見つからなかった。

写楽の落款は、曲がっていたり、ゆがんでいたり、斜めになっていたりする。西洋風のしゃれたサインとは思えないし、絵とのバランスも悪く、唐突な位置にある感じがする。落款は、写楽ではなく、版元や彫り師が勝手に作ったというのは、あり得ないのだろうか。

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