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2015/7-2011 Yuji.W

☆フーコーの振り子☆

◎ 北極では、振り子の振動面が1日1回転する。納得できる。緯度 e 度の地点では、振り子の振動面は、1日に1回転しない。なぜか?{中学生の時からの謎だ!2011} ☆Foucault

◇ ベクトル<> 座標単位ベクトル<xu>,<yu>,<zu> 内積* 外積#
微分; 
時間微分' 積分$ 10^x=Ten(x) e^(i*x)=expi(x) 物理定数  2015/07/14

◇地球の自転によるコリオリ力◇

■ 北極の上空から、地球の北半球を見れば、反時計回りに回っている。物体の運動は、進行方向の右向きに力が働くように見なせる。

大砲を撃つ。まっすぐねらった方向には進まない。右にずれる。

低気圧の中心に向かって流れ込む風を考えよう。地球の自転を考えなければ、中心に向かってまっすぐに進む。自転を考えると、北半球では、右向きの力を受けるから、中心に向かおうとすると、右に曲がる。したがって、全体としては、低気圧は反時計回り(左回り)の空気の渦となる。

■ 南北に移動する人工衛星を考えよう。北極と南極の上空を通る。人工衛星は、地球の自転に関係なく、円運動をしている。

北極を通り日本に向かう人工衛星は、まっすぐ日本には来ない。日本に近づくつれて、地球は自転してしまい、アジア大陸の方にずれていってしまうように観測される。

日本の上空を北に向かっているとしよう。まっすぐ北に向かっているのだが、日本はどんどん東にずれていってしまうので、人工衛星は、西よりに、アジア大陸に向かって進んでいるように観測される。

◇振り子に働く4つの力◇

「回転する球の表面上の運動」

◆ 球 半径 A 角速度 <w.>=<zu>*w.

[+]慣性系(x,y,z) 球の中心 原点 自転軸 z軸 赤道面 xy平面 位置 <r>

[○]回転系3(X,Y,Z) xy平面から角度 e の1点 原点

地表面で東 X軸 北 Y軸 地表面に対する鉛直線 Z軸 位置 <R>

地表面の小さな動きに限定する Z=0 |X|<<A |Y|<<A

■ <R>=<Xu>*X+<Yu>*Y
 <V>=<Xu>*X'+<Yu>*Y'
 加速度 <Ac>=<Xu>*X''+<Yu>*Y''

 <r>=<Xu>*X+<Yu>*Y+<Zu>*A

 <r.u>=<Zu>*cos(e)-<Yu>*sin(e) <r.>=(<Zu>*cos(e)-<Yu>*sin(e))*A*cos(e)

 <zu>=<Yu>*cos(e)+<Zu>*sin(e)

 <V>#<w.>=<r.u>*X'+<Xu>*Y'*sin(e)

 m*<Ac>=<F>+2*m*<V>#<w.>+<r.u>*A*cos(e)*w.^2

◎ 振り子の運動を、地球の自転を考慮して、考えよう。

■ フーコーの振り子に働く4つの力の大きさの目安 重りの質量M

@重力(単位質量当たり)〜10

Aコリオリ力(単位質量当たり)=2*w.*v〜2*7.3*10^(-5)*1〜10^(-4)

B遠心力(単位質量当たり)=w.^2*R〜[7.3^(-5)]^2*6400*10^3〜0.03

Cひもの張力(単位質量当たり)~重力

コリオリ力は非常に小さいことがわかる。

遠心力は、その地点で、大きさも方向も一定であると見なせる。そもそも、重りがつり合いの位置をとるとき、重力+遠心力の方向に、ひもは垂れ下がっている。振り子の振動面が変わるということを考えるのに、遠心力は考えなくてよい。

振り子の振動面が変わるのは、コリオリ力の効果を考えればよい。

■ 地球の北半球にある振り子に働くコリオリ力の方向を考えてみよう。

コリオリ力は、[◎]回転座標系で、動いている物体に働く見かけの力であり、その方向は、北半球では、モノが動く方向に対して右向きに働く。
振り子が振れる時に、振れている方向に対して常に右向きに働くから、振り子は常に右へ行こうとする。振り子が行く時も右へ、帰ってくるときも右へ行こうとするから、全体として、振り子の振れる面が左回り(時計回り)にずれていくことになる。

■ 赤道にある振り子や、北極にある振り子に働く、コリオリ力 Fco の大きさを考えてみよう。振り子の動きは、地表面上を動くとみなす。

 Fco=2*m*|<V>#<w.>|=2*m*w.*(質点の速さの、赤道面への射影)〔

e=0 赤道面

コリオリ力は鉛直方向になる。振動面に変化を与えない。

e=Pi/2 北極 (質点の速さの、赤道面への射影)=V Fco=2*m*V*w.

 力の方向は、振動面に垂直になるから、この大きさが、振り子に影響する。

 北極では、この力を受け、振り子の振動面は1日に1回転する。

※ そもそも、Vは、振り子の重りの速さだから、一定の速さでない。

■ 緯度 e の地点にある、振り子に働く、コリオリ力 Fco の大きさを考えてみよう。振り子の動きは、地表面上を動くとみなす。

 Fco=2*m*|<V>#<w.>|=2*m*w.*(質点の速さの、赤道面への射影)〔

緯度 e の地点では、振動面の方向によって、コリオリ力の大きさが異なる。〔〕{ちゃんと明記してある資料は見あたらない!2014/6}

そのコリオリ力と振り子の振動面は垂直ではないから、振動面の回転を考えるには、その垂直成分を考えなくてはならない。その成分を Ff と書く。

@振動面 東西方向のとき (Vの、赤道面への射影)=V

 Fco=2*m*V*w. 赤道面上

この力と振動面とが作る角 e
この力と、振動面と垂直な方向が作る角 (Pi/2-e)

 Ff=Fco*cos(Pi/2-e)=Fco*sin(e)=2*m*V*w.*sin(e)

A振動面 南北方向のとき (Vの、赤道面への射影)=V*sin(緯度)=V*sin(e)

 Fco=2*m*V*w.*sin(e) この力と振動面は垂直であるから

 Ff=Fco=2*m*V*w.*sin(e)

B振動面が任意の方向を向くときも、次のようになると予想できる。

 Ff=2*m*V*w.*sin(e)〔

「ベクトル3重積、4重積」

■ <A>*(<B>#<C>)=<B>*(<C>#<A>)=<C>*(<A>#<B>)

■ <A>#(<B>#<C>)=<B>*(<A>*<C>)-<C>*(<A>*<B>)

■ (<A>#<B>)*(<C>#<D>)
=(<A>*<C>)*(<B>*<D>)-(<A>*<D>)*(<B>*<C>)

★ (<A>#<B>)*(<A>#<C>)
=A^2*B*C*[cos(∠BOC)-cos(∠AOB)*cos(∠AOC)]

■ (<A>#<B>)#(<C>#<D>)
=(<A>*(<B>#<D>))*<C>-(<A>*(<B>#<C>))*<D>

◆ Bの予想の証明 回転軸 <zu> 地表面の鉛直線 <Zu> 緯度 e

 <zu>*<Zu>=cos(Pi/2-e)=sin(e)

コリオリ力 <Fco> コリオリ力の、振動面への垂直成分 Ff

■ <Fco>=2*m*V*w.*<Vu>#<zu>

振動面に垂直なベクトル(<V>にも<Zu>にも垂直) <Vu>#<Zu>

※ <V>⊥<Zu> |<Vu>#<Zu>|=1

 Ff
=<Fco>*(<Vu>)#<Zu>)
=2*m*V*w.*(<Vu>#<zu>)*(<Vu>)#<Zu>)

ここで、ベクトル4重積の公式を使って、

 (<Vu>#<zu>)*(<Vu>)#<Zu>)
=cos(∠zOZ)-cos(∠VOz)*cos(∠VOZ)
=cos(Pi/2-e)-cos(∠VOz)*cos(Pi/2)
=sin(e)

 Ff=2*m*V*w.*sin(e)〔〕緯度 e の地点で働くコリオリ力の、振り子の振動面の垂直成分(振動面に方向に関係なく一定の値になる)

北極で e=Pi/2 Ff=2*m*V*w. 赤道で e=0 Ff=0

{これを明記してある資料は見あたらない!2014/6}

◇フーコーの振り子◇

◎ 振り子の運動を、地球の自転を考慮して、考えよう。

■ 地表面に固定された[○]回転系で考えよう。

北極で、コリオリ力の、振り子の振動面の垂直成分 2*m*V*w.

この力を受けて、振り子の振動面は、1日に1回転する。

緯度 e の地点では、コリオリ力の、振り子の振動面の垂直成分 2*m*V*w.*sin(e)

その力を受けて、振動面がずれていく量は、北極の場合の sin(e)倍になる。

したがって、1日に振動面が回転する角度は 360°*sin(e) となる。〔

{中学校以来の謎がやっと解けた!2014/6}

◆ 緯度 e での振り子の運動 [◎]回転系(X,Y,Z)

地球の自転角速度 w. w.*sin(e)=W 振り子の振動の角速度 wp=root(g/L)
wp>>w.

■ [○]回転系で 振動は地球の大きさに比べ、非常に小さいから、運動はxy平面に限られるとする。また、遠心力は、重力の一部に込まれているとする。

運動方程式/m <Ac>=<F>/m+2*<V>#<w.>

成分表示 X''=-wp^2*X+2*W*Y' y''=-wp^2*Y-2*W*X'〔

◇フーコーの振り子の方程式を解く◇

◇虚数単位 i

◆ 緯度 e での振り子の運動 [◎]回転系(X,Y,Z)

 X''=-wp^2*X+2*W*Y' Y''=-wp^2*Y-2*W*X'

地球の自転角速度 w. w.*sin(e)=W 振り子の振動の角速度 wp=root(g/L)
wp>>w.

■ 平面運動だから、複素平面を使うことができる。X軸:実数軸 Y軸:虚数軸

複素数 Q を使って X+i*Y=Q Q'=X'+i*Y' Q''=X''+i*Y''

 Q''=-wp^2*Q-i*2*W*Q'

 Q''+i*2*W*Q'+wp^2*Q=0〔〕Qの2階線型斉次微分方程式

基本解2つを求めよう。複素数 h を使って Q=exp(h*t)=E(h*t) と置くと、

※ Q=exp(i*h*t)=Ei(h*t) と置いてもよい。

 Q'=h*E(h*t) Q''=h^2*E(h*t)

 E(h*t)*(h^2+2i*W*h+wp^2)=0

 h^2+2i*W*h+wp^2=0〔〕複素数係数の2次方程式

wp>>W より h^2+2i*W*h+wp^2-W^2=0 と見なせば、因数分解できて、

 [h+i*(W-wp)]*[h+i*(W+wp)]=0

 h=-i*(W-wp) , -i*(W+wp)

※ 解の公式を使って h=-i*W+(+-)*root[(i*W)^2-wp^2]
wp>>W より h=-i*W+(+-)*i*wp

 Qの基本解 h1=Ei[(-W+wp)*t] h2=Ei[-(W+wp)*t]

 Qの一般解 Q=Ei(-W*t)*[A*Ei(wp*t)+B*Ei(-wp*t)]〔
A,Bは初期値によって決まる定数。A,B を決めたい。

赤道で e=0 W=w.*sin(0)=0

 Q
=A*Ei(wp*t)+B*Ei(-wp*t)
=(A+B)*cos(wp*t)+i*(A-B)*sin(wp*t)

 X=(A+B)*cos(wp*t) Y=(A-B)*sin(wp*t)
 X'=-(A+B)*wp*sin(wp*t) Y'=(A-B)*wp*cos(wp*t) 

t=0 で X=X0 , Y=0 , X'=Y'=0 とすれば、

 A+B=X0 A-B=0 A=B=X0/2

A,B が決まったので、

 Q
=(X0/2)*Ei(-W*t)*[Ei(wp*t)+Ei(-wp*t)]
=X0*Ei(-W*t)*cos(wp*t)
=X0*[cos(W*t)-i*sin(W*t)]*cos(wp*t)

 X/X0=cos(W*t)*cos(wp*t) Y/X0=-sin(W*t)*cos(wp*t)〔

振り子の角振動数 wp 地球の自転角速度*sin(緯度)=W=振動面の角速度

{素晴らしい、まとまった!2014/6}

★IF{ 赤道 e=0 W=w.*sin(0)=0 }

 X/X0=cos(wp*t) Y/X0=0 振動面は動かない

★IF{ 北極 e=Pi/2 W=w. }

 X/X0=cos(w.*t)*cos(wp*t) Y/X0=-sin(w.*t)*cos(wp*t)

振動面は時計回りに、地球の自転角速度と等しい角速度で回転する。1日1回転する。

★IF{ e=30° W=w./2 }

 X/X0=cos(w.*t/2)*cos(wp*t) Y/X0=-sin(w.*t/2)*cos(wp*t)

振動面は時計回りに回転する。1日で半回転する。

★ 東京の緯度は 36°、sin(36°)=0.59 だから、

 W=(1日で1周)*0.59=(1日で212°)

{上記のように、回転系の運動方程式をたて、コリオリの力を考えて解くのは、難しかった。いろいろな知識が必要だった。難しいんだと、中学、高校、大学と、だれも言ってくれなかったし、どこにも載っていなかった。そういうことを、はっきりさせてほしかったなあ…。

ところで、フーコーが実際に実験したのが、1851年、なんと江戸時代!}

フーコーの振り子

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