物理 量子力学

2015/9-2012 Yuji.W

薄膜の干渉

◎ 薄膜の干渉や回折を、量子電磁力学(経路積分)で考えよう。

◇ベクトル<> 座標単位ベクトル<xu>,<yu>,<zu> 内積* 外積#
微分 y;x 2階微分 y;;x 
時間微分 y' 積分 ${f(x)*dx} 定積分 ${f(x)*dx}[x:a~b]
10^x=Ten(x) ネイピア数 e e^x=exp(x)
複素共役 z? 虚数単位 i e^(i*x)=exp(i*x)=expi(x) 〔
物理定数.2015/10

☆波の干渉と光の干渉の違い☆

■ 水の波の干渉と、光の干渉は、全く違うものだ。そこを理解しないと、光の干渉の不思議さ、本質はわからない。

光の干渉を、波の干渉で説明してあったり、さらには、干渉を起こすから光は粒子ではない、波であると説明してあるモノが多い。確かに、100Wの電球からは、1秒間に Ten(20)_個 程度の光子が飛び出している。多数の光子を扱う場合は、光を波とする近似でよい。

だが、光子の数を極端に少なくしても干渉は起きるのだ。そこが、光の不思議な所だ。光子ひとつひとつがどうふるまっているのかを考えるには、量子電磁力学(経路積分)が必要である。

■ 普通の波

観測点で、波の高さが周期的に変化する。波の位相(高くなったり、低かったり)は観測できる。2つの波が重なれば、高め合う場合もあるし、低め合う場合もある。

■ 量子力学的粒子(光子、電子など)

放射する光の強さをだんだん弱くする。光子が時間間隔をおいて出るようになる。光子ひとつずつのエネルギーは弱くなることはない。だんだん光子の数が少なくなっていくだけである。観測点を通過する粒子の数が、周期的に多くなったり、少なくなったりするわけではない。観測にかかる物理量で、周期的に変化するものはない。確率振幅の位相は、観測することはできない。

ああ、それなのに、

複数の粒子が重なり合うとき、どちらの粒子がどちらの経路を通ったかわからない場合、干渉を起こす。ある特定の観測点には、全く粒子が来ない、他のある観測点には、より多くの粒子が来るなどという事が起きる。-★- {不思議!}

ただし、どちらの粒子がどちらの経路を通ったかをはっきりさせると、干渉は起きなくなる。

☆屈折率と光の速さ☆

■ 屈折率 N の媒質中では、光の速さや波長が 1/N 倍になる。

■ 屈折率 光の速さ/c

 ガラス(屈折率 1.46) 0.68 倍 ガラス(屈折率 1.5) 2/3 倍
 水(屈折率 4/3) 3/4 倍

☆反射☆

■ 屈折率小の媒質を進む光が、屈折率大の媒質で反射する場合
 位相が(pi)だけ反転する-★-

屈折率大の媒質を進む光が、屈折率小の媒質で反射する場合
 位相は変化しない

■ 反射率=反射される光子の確率=反射されるエネルギーの割合

■ 屈折率 N1 の媒質と、屈折率 N2 の媒質の間における、垂直光に対して、

 反射率=[(N1-N2)/(N1+N2)]^2-★-

■ 次の2つの場合の反射率は変わらない{おもしろい!}

 屈折率小の媒質を進む光が、屈折率大の媒質で反射する場合
 屈折率大の媒質を進む光が、屈折率小の媒質で反射する場合
{注}光の吸収がない場合を考えている。

□反射率

 ガラス(屈折率1.46)=0.035
 ガラス(屈折率1.5)=0.04 …確率を表す。(確率振幅は 0.2)
 水(屈折率4/3) 1/49~0.02

☆薄膜による干渉☆

◆ ある媒質の中に、違う媒質の薄い平行板を入れ、面に垂直に単色光を当てる。2つの境界面により反射された光は、干渉する。

■ 屈折率小の媒質の中に、屈折率大の媒質の板を入れても、屈折率大の媒質の中に、屈折率小の媒質を入れても、片方の境界面では、(pi)だけ位相が逆転し、もう一方の境界面では、位相は変わらない。板の中の光の波長を λ とすると、

 経路差 ∝ λ のとき、反射される光の確率は 0
 経路差が、λ/2 だけずれると、反射される光の確率が増える

{注}経路差=2*平行板の厚さ

▲ 単色光でなく、波長の異なる可視光の場合 経路差が大きくなるほど、その条件を満たす波長の数は増える。

☆薄膜による干渉-2-☆

■ ガラス(屈折率1.5 反射率4%)の薄膜に上から垂直に光を当てる。100個の光子を打ち込んだとしよう。

上面で 4個の光子が反射される。残りの96個がガラス内に入り、下面に達する。そのうちの 4%の光子が反射される。すなわち、3.8個がもとに戻って来る。残りの92.2個だけ、ガラスの薄膜を通過する。ガラスの薄膜の透過率は、92.2%である。

以下、下面で反射された光子の数3.8個を、4個として表す。

上面と下面で反射された光子は合わさり、8個もとに戻って行くのだろうか。
そうならない{不思議!}

光子は、どちらの面で反射されたか区別がつかない。したがって、干渉が起こる。薄膜の厚さにより、
 0個〜16個まで、いろいろな場合が起こる。-★-

☆薄膜による干渉-3-☆

可視光(赤)

波長_m

振動数Hz

エネルギー_eV

可視光(赤)

7*Ten(-7)

4.3*Ten(14)

1.7

▲ 波長~Ten(-6)_m 1cm~10000*波長

◆ 経路差 Δ=2*薄膜の厚さ

■ 上面で反射される光子の確率振幅
 {Pa1(x,t)}=0.2*expi[k*x-w*t+(pi)] 位相は反転

下面で反射される光子の確率振幅
 {Pa2(x,t)}=0.2*expi[k*x-w*t+2(pi)Δ/λ]

2つの経路による光子が重ね合うと、確率の和ではなく、確率振幅の和を考えて、

 {Pa(x,t)}={Pa1(x,t)}+{Pa2(x,t)}
=0.2*expi(k*x-w*t)*{-1+expi[2(pi)Δ/λ]}

□Δ=λ/4 {Pa(x,t)=0.2*expi(k*x-w*t)*{-1} |{Pa(x,t)|^2=0.04
Δ=λ/2 {Pa(x,t)=0.2*expi(k*x-w*t)*{-2} |{Pa(x,t)|^2=0.16
Δ=3λ/4 {Pa(x,t)=0.2*expi(k*x-w*t)*{-1} |{Pa(x,t)|^2=0.04
Δ=λ {Pa(x,t)=0.2*expi(k*x-w*t)*{0} |{Pa(x,t)|^2=0

 以下、繰り返し。

▲ 反射率=0 のとき、すべての光子は薄膜を通り抜ける{!}

☆薄膜の反射率、透過率☆

◆ 薄膜の上方から光を当てる。上方には、どのくらい反射されるのか。下方にはどれだけ透過するのか。干渉がない場合を、詳しく計算してみよう。

1回の反射率 r=0.04 透過率 t=0.96 r+t=1

「薄膜の反射率、透過率」

上方へ

下方へ

合計■

上面

r

t

1

下面

r*t

t^2

t

2回目の上面

r*t^2

r^2*t

rt

2回目の下面

r^3*t

r^2*t^2

r^2*t

3回目の上面

r^3*t^2

r^4*t

r^3*t

3回目の下面

r^5*t

r^4*t^2

r^4*t

4回目の上面

r^5*t^2

r^6*t

r^5*t

■ 薄膜の上面で上方に戻る確率 R

 R=r+r*t^2+r^3*t^2+r^5*t^2+…
=r+t^2*r*(1+r^2+r^4+…)=r+t^2*r/(1-r^2)
=r+r*t/(1+r)=2r/(1+r)

薄膜の下面から下方に透過する確率 T

 T=t^2+r^2*t^2+r^4*t^2+…=t^2*(1+r^2+r^4+…)
=t^2/(1-r^2)=t/(1+r)=(1-r)/(1+r)

▲ R+T=(1+r)/(1+r)=1 {素晴らしい!}

□R=2*0.04/1.04=0.077~0.08 T=0.96/1.04=0.923~0.92

▲ 詳しく計算しても、あまり意味がない。単純に 反射8% 透過92% と考えてよいことがわかる。

☆薄膜による干渉-量子電磁力学(経路積分)-☆

◎ ガラスの薄膜による光の反射の干渉を量子電磁力学(経路積分)で考えよう。

◆ 経路差 Δ 薄膜の厚さ d  Δ=2*d

● 以下のように近似した。「光は、表面と裏面の2ヶ所で反射する。表面では、位相が180°反転する。」

 d=λ/4 Δ=λ/2 |{Pa(x,t)|^2=0.16=最大 84% は通過する。
 d=λ/2 Δ=λ |{Pa(x,t)|^2=0 反射しない。すべて通過する。

■ 量子電磁力学(経路積分) 光は、薄膜のあらゆる所で反射すると考える。
以下、λ/12 で分断した面だけを考えてみる。

■ d=λ/4 Δ=λ/2 の場合

「確率振幅」

厚さ

経路差

位相差

1/12

1/6

1/6

1/6

1/3

1/3

1/4

1/2

1/2

/波長

/波長

/[2(Pi)]

▲ 確率振幅の方向は、時計で表現すれば、
2時+4時+6時=(12時〜6時) になり、最大値を取る。

{注}本当は、経路差に比例した時間の分だけ早めに光子が放出され、光子が計測点に同時刻に戻ってくる状況を考えている。

{注}光が、ガラスの中にある電子と相互作用をし、反射される。その時に、位相は90°だけずれる。ただし、どの場所でも、同じ量の位相がずれるから、位相差を考える場合は、無視してよい。

■ d=λ/2 Δ=λ の場合

「確率振幅」

厚さ

経路差

位相差

1/12

1/6

1/6

1/6

1/3

1/3

1/4

1/2

1/2

1/3

2/3

2/3

5/12

5/6

5/6

1/2

1

1

/波長

/波長

/[2(Pi)]

▲ 確率振幅の方向は、時計で表現すれば、
2時+4時+6時+8時+10時+12時=(12時〜12時) になり、0 である。

  薄膜の干渉  

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