▲山へ行こう Yuji.W

▲剱岳050728▲

☆概要☆

 ■ 山歩きを始めた2002年、ヤマケイjoy夏号に出ていた剱岳の岩場の写真を、自分の部屋に飾った。あんな危ない所、自分には無理だと思っていた。でもいつか行きたいという気持ちもあった。おととしの秋から室内クライミングジムに通い出し、なんか行けそうな気がしてきた。今年の夏の最大の目標にしてしまった。そして、行くことにした。

[ 日時 ] 2005/7/28(木)-29(金)

[ コース・タイム ] <1日目> 室堂ターミナル935-1015雷鳥平1025-1155別山乗越1230-1335剣山荘

<2日目> 剣山荘355-415一服剱-445大岩-510前剱515-640剱岳700-800前剱-840一服剱850-910剣山荘945-1050別山乗越1100-1200雷鳥平1210-1255室堂ターミナル

[ 標高 ] 室堂ターミナル(2430m)-雷鳥平(2277m)-別山乗越(2760m)-剣山荘(2475m)-一服剱(2618m)-前剱(2813m)-剱岳(2999m)

[ 天候 ] 1日目晴れ。2日目霧。

[ 服装 ] Tシャツ+シャツ

[ 装備 ] 30リットルザック(アークテリクスのボラ)全部で8kg、中登山靴(新品アオスタ)

[ 交通 行き ] 新宿2354-<信州81号*全車指定>-508信濃大町525-<バス>-600扇沢730-<トロリーバス-徒歩-ケーブルカー-ロープウェイ-トロリーバス>-910室堂

[ 交通 帰り ] 室堂1310-<乗り物4つ>-1420扇沢1430-<バス>-1500信濃大町1529-<スーパーあずさ>-1836新宿

☆1日目☆

■ 深夜バスを前日に申し込んだら、満員だった。夜行列車で行くことにした。指定席はすぐ取れた。
昼間クライミングジム、夕方実家に寄り、今回の山行を報告し出発。母親は、かつて中年者登山をしていて、剱はもちろん、かなりいろいろな山を登っている。その頃は、老人のやるスポーツだとバカにしていた。まさか自分が、こういうことをするようになるなんて思ってもみなかった。

新宿から夜行、特急ではないけれど、全車指定席。乗車率1/3、ほとんど登山客。乗車券4620円、指定席料510円。隣の席があいていたので、横になって寝ることができた、もちろん体を丸めてだが。深夜バスと違って、割としっかり寝ることができた。深夜バスで行くと、次の日眠たくてしかたがないのだが、今回は、疲労度が全然違うように感じられた。ただし、クーラー効き過ぎで、寝冷えしそうであった。

松本からは大糸線、乗り換えはしないけれども。夏の早朝の緑のたんぼの中を走る。たんぼの両側は、大きな山が南北に走る。大地溝帯、日本列島を2つに分ける、折れ目だ。

508信濃大町。いなかの小さな駅。60人ほど下車したようだ。駅前左手に小さな、バス切符売り所。扇沢まで1330円。高い。グループで来ている登山客は、タクシーで行くようだ。30人ほど乗せて、535バス発。すぐ国道沿いに走る。商店街がずうーと続く。諏訪、塩尻、松本から日本海の糸魚川まで続く、古くからの街道のようだ。信濃大町は、このあたりの中心都市だったのであろう。国道を離れれば、すぐ緑のたんぼ。高校時代に、ここで合宿したことがある。でも景色の記憶はない。

600扇沢。快晴、風なし、20℃。既に、50人ぐらいの人がいる。730のトロリーバス始発まで待つ。650切符売り開始。並んで待つ。これから何度も順番待ちを経験させられる。扇沢-室堂の往復切符と荷物代210円で、9000円弱。

黒部ダム。ダムの上を歩いて渡り、向こう岸のトンネルに入る。次は、ケーブルカー。

ケーブルカー終点。次のロープウェイまで30分以上待ち時間がある。駅の外に出て、景色を眺めたり、軽い食事を取ったりした。

次は、またトロリーバス。立山のトンネル内を走る。水が側溝をじゃんじゃん流れている。

910室堂。やっと着いた。建物の外に出ると、緑の大地、回りは、ゴルフコースのような白い雪渓をたくさん抱く山々。観光客と登山客がたくさん。延命水のお水を飲んで、御利益を願う。

935歩き始め。快晴。今日は、剣山荘まで。観光客といっしょにのんびり石畳の道を歩く。富山平野と海が見える。このあたりは、既に標高2400mある。八ヶ岳の行者小屋が2340mなので、それよりも高い。緑色は、ハイマツだ。ここは既にハイマツ帯なのだ。

地獄谷から硫黄のにおいがしてくる。

1015雷鳥平、快晴、風弱、15℃。テント場。硫黄のにおいが少しする。立山が目の前に見える。1025発。

幅のある川を渡る。富山湾に流れ込む称名川の源流だ。ゴルフ場のコースのように白い雪渓がいたる所にある。室堂は、本当に雪渓の多い所だ。日本海に隣接した3000m近い山々が連なるので、豪雪地帯になるのだろう。

ここの登りは、ゴール地点が一望でき近くに見えるけれども、本当は時間がかかるので、のんびり登った方がいいと思う。

1100お花畑で休憩。晴れ。1120発。

1155別山乗越。晴れ、南西の風あり、19℃。20人ぐらい休憩中。標高2760m、八ヶ岳の赤岳展望荘が2720mなので、かなり高い所にいるわけだ。ロープウェイの駅で買った、おにぎりとおやきで昼食。

1230発。剣山荘まで、標高差約300mの下り、剱沢の左側(西側)のコースで行くことにした。久しぶりの雪渓のトラバースに緊張する。雪渓は嫌いだ。

剣山荘と明日のコースが見えてきた。

大岩ごろごろの所を下って、1335剣山荘。晴れ、風弱、15℃。別山乗越から1時間5分、室堂ターミナルからちょうど4時間(昼食・休憩込みで)。休憩が多い割に、いいペースだと思う。

剣山荘、夕食と弁当で、8400円。中部屋は、2段ベッド方式で、20人ぐらい収容される。ひとりふとん1枚分のスペースは確保できた。トイレは水洗で快適だが、数が少ない。お風呂もあるが、3時半から5時までで、ひとり2、3分でお願いしますと、館内放送された。男子風呂は、お風呂が3人ぐらい、洗い場が3人ぐらいが限度の狭さ。私が入ったときは、たまたますいていて、10分ぐらい長湯した。石けんなど禁止。小屋は100人は超えていたようで、混雑していた。夕食5時、館内放送の案内があったので、さっと食堂に行ったら、2番目に入れた。狭いスペースにぎゅうぎゅう詰めで食べる。並んで待っていた人たちがいた。

☆2日目☆

■ 300起床。天気予報では、午前中晴れ、午後曇ときどき雨。

外に出てみると、雲はあるものの、東には下弦の半月、西には沈みかけの夏の大三角形、天の川もはっきり見える。カシオペア座、北極星も見える。流れ星も2つ。月の光で、影もくっきり。宇宙は、どうしてこんなにきれいにできているのだろう。不思議だ。地球も、空や海の青色、木々の緑色、雲や雪の白色、花のいろいろな色、本当にきれいだ。偶然に、こんなにきれいにできた?奇跡?こういうのを美しいと感じるように、生物はコントロールされている?神様が、こういう風にデザインした?真相を知っている存在、神様でも宇宙人でもいいから、答えを教えて欲しい。

もう既に登山の準備をしている人たちもいる。早く行動しないと、雨の中の剱になってしまう。それだけは避けたい。私も4時に出発することにした。

355小屋前発。いつのまにか雲が空を覆っている。寒さ対策にレインコートの上着を着る。ヘッデンをつけて歩き出す。一服剱まで、ヘッデンの光がホタルのように揺れている。こんな早朝歩き出すのも、ヘッデンで歩くのも初めててだし、このコースも初めて。これから天気が崩れそうだし、不安だらけ。

今日のコース 剣山荘(2475m)-一服剱(2618m)-前剱(2813m)-剱岳(2999m)

とにかく前の人のおしりにくっついていく。ヘッデンでなんとか歩けるものだ。ねんざしないよう、気をつける。

標高差150mを登り、415一服剱。ほんとのちょっとした丘。ここで引き返そうとも思っていたが、そういう人はいないので、私も行くことにした。

東の空がうっすらオレンジ色、ヘッデンを消す。人のおしりをついていく。ちょっと下ったあと、ルンゼ状の悪い道を登る。

445大岩。鎖あり、少し渋滞。霧、風あり、6℃。下弦の月が真上に見える。

510前剱、一時的に霧が晴れた、5℃。一服剱から標高差200m、55分。ゆっくり休みたいのだが、見晴らしは悪いし、天候がくずれると予想されるので、先を急ぐ。515発。

頂上まで標高差180m。まず下り。

 5,6分歩くと、ここ。まず一発ストレートパンチという感じで、これからのきびしい道程を覚悟させてくれる。こちら側と向側の間の溝は、深く切れていて、下を見ると渡っていけない。ここで引き返した人がいた。

スラブの鎖場を下る。きびしい岩稜帯がえんえんと続く。だんだん疲れて来る。

606カニノタテバイ。前剱から50分。今日の核心部。渋滞している。みなさん、きびしい顔つき。

登り始める。あれ、左足が上がらない。なんと、靴ひもがほどけ、それを踏んでいた。下から、早く行けの声がかかる。しかたなく鎖をつかんでさっさと登る。垂直に近い壁を、両手両足で登るのは、ほんの5mぐらいだ。数十メートルを登るのだろうと思っていたので、あっけなく終わった。

カニノタテバイを抜けると、すぐ頂上かなと思っていたら、そうではなく、20分以上また歩く。

640剱岳。やったあ、やりました。剣山荘から、標高差500mちょっと、2時間45分(休憩込み)。30人ぐらいた。霧、5℃。

まだ朝の7時なのに、下山。

しばらく歩くと、さっきのカニノタテバイとの分岐。右の鎖場を下って、カニノヨコバイ。1歩目がわかりにくい。鎖をにぎったまま、足をずりずり下ろしていくと、足場がある。あとは、左下に続く割れ目があるので、そこに足を順番に送っていく。下がずーと切れているのは、最初の1mぐらいで、そこで落ちれば死ぬのでしょうが、あとは、3mぐらい下に山があるので、落ちても重傷ですむと思う。5mぐらいトラバースして終わり。ここは、鎖をがっちり握って渡った。

すぐ長いハシゴ。まもなく、避難小屋があって、上りと下りの合流点。岩稜帯を歩く。登りの人と多くすれ違う。これから登るのは、岩も鎖も濡れていてすべるし、大変だ。事故がない事を祈る。

前剱の前で、右に分かれ、前剱の西側を巻く。登ってくるときの鎖場のトラバースは通らない。鎖場はあって、50cm幅のつるっとした斜めの平面のある岩があって、そこに無造作に足を置いたら、ずこーんと転倒。あわてて鎖をつかむ。そのまま滑れば、何十メートルも下っていけそう。左手中指を突き指、痛い。腕時計につけていた、小さいコンパスが取れ、下に転がっていく。

道が2つに分かれ、右下にもいけそうだが、踏み跡はない。左上に少し上がると、正しい下り道がある。このころ800。

悪い道をジグザグに下る。

だいぶ下ってきて、一服剱が見える。安心感があふれる。

840一服剱。850発。

下の剣山荘目指して、ぶらぶら、ただし、気を抜かず。

910剣山荘。曇、風あり、9℃。無事ついた。たまたま一緒に歩いて来た3人で、写真を撮ってもらい、握手をした。3人でコミュニケーションをとって歩けたことが、精神的にとても大きかった。ひとりだと、もっと、苦しかったと思う。

剱岳から2時間10分、往復5時間15分(休憩込みで)。達成感あり、じーんとする。先に登頂を済まし、感激している女性の方もいた。お互い、自分のした事をほめてあげたいよね。

昨晩もらったお弁当を食べる。

まだ10時前なので、これから東京まで帰ることにした。

945発。別山乗越までは、3つのコースがあるが、一番下の楽そうなコースを選んだ。雪渓を渡り、剱沢小屋前を通り、剱沢キャンプ場を抜け、登る。向かいの雪渓が多いコースを歩いている人たちがよく見える。傾斜は急ではないが、足が止まる。

1050別山乗越、曇、風あり、11℃。コルはどこでも風の通り道だ。寒い。剱に分かれを告げる。雨は降っていないが、頂上は雲に隠れているので、登山はきびしい状況になっているだろう。心配だ。

1100下山。多くの登る人とすれ違う。自分も昨日この時間帯はここらあたりを登っていた。

下りだが、足が動いてくれない。今朝4時から歩き出しているので、もう7時間動いている。疲れが出てくる。1200雷鳥沢。ちょっとぐったり。このまま心臓が止まっちゃうかもしれないと不安になる。曇、風あり、16℃。10分休んでまた歩き出す。

室堂まで多少のアップダウンがある。これが、苦しいのなんのって。観光客の間を、下を向き、とぼとぼと、よれよれと歩く。1255ターミナル着。1300のバスがあった。乗る。

疲れ切って1255室堂ターミナル着。1300トロリーバス、最後のひとりという感じで座れた。着いてすぐロープウェイ。着いてすぐケーブルカー。着いて、黒部ダムを渡る。バスが発車した直後、残念30分待ち。1420扇沢。さわやか信州号はここを通るが、ここでは切符を購入できない。信濃大町までバス。1430発、1500大町。大町の駅員さんはとても親切で、ていねいに応対してくれた。1529スーパーあずさ自由席、座れた。

山の中にいる自分は、本当の自分に近いと思う。いっぱいいっぱいになって歩いて、本当の自分が出てくるのだと思う。そして、自然からいろいろな力を分け与えてもらって、ほんの少し、よりいい人間になれるような気がする。

今回の私のBGMは、山下タツロー。夕方、新宿に近づいていくあの物憂い感じが好きだな。物思いにふけり、そうして、また、いつもの自分にもどっていく。

 ▲山へ行こう 剱岳050728 

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